不動産投資は頭金なしでも大丈夫?不動産融資の基本を解説!
不動産投資を始めるなら、金融機関で「ローン」を組む必要があります。
ローンを組む際、通常でしたら「頭金」が必要ですが、例えば物件の評価が高かったり、本業の年収が高かったりすると、頭金なしで融資を組めることがあります。
このように、頭金なしでローンを組むことを「フルローン」と言います。
フルローンということは、手元資金の持ち出しがないわけですから、投資家としては非常にありがたいことです。
しかし、フルローンを組むということは、頭金を入れた時と比べて借金が多くなるわけですから、それだけ投資のリスクが増すことになります。
この記事では、フルローンを組むときの注意点と実際の失敗事例、最後にローンの基本を解説します。
(最終更新日:2022年2月26日)
不動産投資を頭金なしで組むとこんなリスクが!
フルローンが組めたら、誰だって嬉しいものです。
ある意味「タダ」で不動産を購入できるわけですから。
しかし、フルローンの誘惑に負けて不動産を購入すると大変なことになります。
- 返済比率が高くなる
- 出口が見通しづらくなる
返済比率が高くなる
フルローンを組む最大のリスクは、「返済比率」が高くなることです。
返済比率は、以下の計算式で計算できます。
返済比率=毎月のローン返済額÷毎月の家賃収入
例えば、毎月の家賃収入が50万円、ローン返済額が20万円だとすると、返済比率は40%(=20万円/50万円)となります。
返済比率は、不動産経営の安全性を表しています。
よくある失敗事例が、例えば返済比率80%という高水準で不動産投資を始めてしまうことです。
仮に8部屋あるアパートだとすると、2部屋空室が出ただけで収支がマイナスになる計算です。
また、万が一家賃の滞納や突発的な修繕が発生したら、収支は完全にマイナスになってしまいます。
一方、返済比率が40%だったら、8部屋のうち4部屋空室が出ても大丈夫ですし、多少の修繕が発生しても毎月の家賃収入の中でやりくりができます。
返済比率は賃貸経営を左右する重要な要素なのです。
堅実な賃貸経営のためには、返済比率は最低でも50%より下にする必要があります。
フルローンは組めるなら組むべきですが、返済比率が高くなるようなら頭金を入れるようにしましょう。
出口戦略が見えづらい
不動産投資では、出口戦略がとても大切です。
あなたが購入した不動産は、時が立つにつれて劣化していき、最後は解体されます。
通常、不動産は劣化してきたタイミングで売却して、新しい不動産と入れ替えるのが普通です。
そのため、不動産投資では、購入した不動産を何年後にどうするかをあらかじめ決めておきます(出口戦略)。
フルローンで不動産を購入してしまうと、それだけ借入が多くなり、物件を売却するときに「高値」で売却しないと残債と相殺できなくなってしまいます。
フルローンによって出口戦略は確実に狭まりますので、注意しましょう。
フルローンの失敗事例
フルローンで不動産を購入して失敗する事例はたくさんあります。
例えば、スルガ銀行でフルローンでマンションを購入したところ、返済比率が70%を超えてしまった人がいます。
返済比率がこれだけ高いと、ほぼ間違いなく賃貸経営は破綻しますし、途中で物件を売却しようにも、赤字覚悟で売りに出さないと誰も買い手はつかないでしょう。
返済比率60%以上で不動産を購入するとどうしようもありませんので、返済比率は50%より低い水準にするようにし、それ以上の水準になるなら、購入は見送った方がいいでしょう。
不動産投資では一回の失敗が命取りとなりますので、細心の注意を払って物件を購入しましょう。
不動産投資ローンと住宅ローンの違いを再確認!
不動産投資を始めるためには、不動産投資専用のローンを組む必要があります。
一方、私たちが自宅を購入する時にもローンを利用しますね。
実は、不動産投資のローンと住宅ローンは性格が全く違うローンです。
ここからは、不動産ローンと住宅ローンの違いを説明します。
- 金利が高い
- 審査が厳しい
- 融資期間短い
不動産投資ローンとは
不動産投資ローンとは、投資用の不動産を購入する時に利用するローンです。
一方、自宅を購入する時に利用するのが住宅ローンです。
住宅ローンを使って投資用不動産を購入することはできませんし、逆もまた然りです。
金利が高い
不動産投資ローンは、住宅ローンと比べて金利が高い特徴があります。
そもそも住宅ローンは、会社からの給料という安定収入が返済原資となるため、金融機関としてはそれほど目くじらを立てる必要がありません。
また、返済が滞れば、担保としている自宅を追い出されることにつながるため、住宅ローンを組んでいる人は必死で返済しようとするのが普通です。
金融機関としては、住宅ローンの返済が滞るリスクはそれほど高くないため、金利を低くすることができます。
一方、不動産投資ローンの返済原資はあくまで家賃収入となるため、賃貸経営が上手くいかず家賃収入が減った場合に、返済が滞る恐れがあります。
金融機関にとって、不動産投資ローンの方がリスクが高いため、それだけ金利が高くなるのです。
審査が厳しい
不動産投資ローンは、住宅ローンと比べて審査が厳しい特徴があります。
住宅ローンの主な審査材料は、個人の属性です。
具体的には、勤務先や勤務年数、年収、そして過去の返済実績などの信用情報が調べられます。
また、返済が滞ると住居を取り上げられることになり、多くの人が必死に返済すると考えられるため、金融機関としても審査の基準が比較的緩くなっています。
一方、不動産投資ローンでは個人の属性だけでなく、物件の収益性と担保価値が見られます。
物件の収益性では、その物件が現在から将来にわたって安定的に収益を上げられるかどうか調べられます。
当然、賃貸経営が失敗するリスクも孕んでいます。
また、担保価値とは、返済が滞ったときに、物件がいくらで売却できるかを判断するものです。
不動産投資ローンは、考慮すべき要件が複数あるため、審査基準が厳しくなります。
不動産投資ローンを利用できる金融機関
不動産投資ローンを利用できる金融機関は色々とありますが、各金融機関によって審査基準や融資条件は異なります。
一般的には、都市銀行、地方銀行、信用金庫、ノンバンクの順に審査基準が緩くなり、金利は上がっていきます。
都市銀行
三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行などのメガバンクや、りそな銀行が都市銀行にあたります。
審査基準はかなり厳し目ですが、その分金利が低いため、最初に審査に持ち込む際には、都市銀行から始めるのが定石です。
ただし、審査は本当に厳しいので、ある程度不動産投資の規模が拡大してから利用するのが一般的です。
地方銀行
地方銀行は、不動産投資ローンに積極的といえます。
有名なところですと、スルガ銀行や静岡銀行、千葉銀行などが挙げられます。
上記3行は不動産投資の世界では非常に有名な銀行で、審査基準が比較的ゆるい特徴があります。
なお、地方銀行の場合、融資可能エリアが限定されてしまうデメリットがあります。
審査を持ち込む前に、事前に融資可能エリアかどうか確認するといいでしょう。
ノンバンク
不動産投資の世界では最後の砦と言われるのがノンバンクです。
ノンバンクとは、預金は行わず、融資のみを行う金融機関です。
ノンバンクは審査スピードが早く、審査基準も比較的緩い傾向があります。
ただし、その分金利が非常に高いため、事前に収支計画をしっかりと立てることが大切です。
なお、繰り上げ返済をする場合、高額な手数料が取られることもあるため、ノンバンクから一度借りてしまうと、なかなか借り換えづらい特徴があります。
また、ノンバンクで融資を受けると、他の金融機関から「この人はノンバンクからしか融資を受けられない人」とマイナス判断(信用毀損)されることもあるため、注意が必要です。
まずは都市銀行→地方銀行の順に審査を申し込み、それでも審査が通らなかった場合にノンバンクを利用するのが流れです。
政府系金融機関
政府系金融機関として、日本政策金融公庫があります。
日本政策金融公庫は1%台の金利で融資をしてくれる金融機関で、融資にも比較的積極的です。
特に若手や女性の支援に積極的のため、該当する人は積極的に利用したい金融機関です。
ただし、融資期間は通常は15年のため、毎月のキャッシュフローが出にくいデメリットがあります。
一度窓口に行って相談してみるといいでしょう。
不動産投資ローンの審査のポイント
不動産投資ローンの審査を申し込む際には、以下のポイントが見られます。
- 年収
- 勤務先
- 雇用形態
- 勤続年数
- 返済実績
- 借入残高
- 物件の担保価値
- 物件の収益性
年収
通常、不動産投資ローンの下限年収は、500万円だと言われています。
年収が高ければ高いほど、融資を組める金融機関の幅が広がるため、不動産投資の世界では有利に働きます。
しかし、この年収に届かなくても、業者のコネや物件次第で審査が通ることもありますので、諦めないで挑戦しましょう。
また、年収が低い人は、価格の安い区分マンションから融資を進めていくのも手です。
これ以外にも、物件の収益性と担保価値も非常に重要な審査基準となります。
勤務先
金融機関は、勤務先も重要な審査基準としています。
勤務先が倒産したら、ローンの返済ができなくなる可能性があるからです。
一般的な審査基準としては、上場企業か、それに準ずる規模の会社であるかどうかです。
従業員数や資本金、売上などでも判断します。
雇用形態
やはりパートやアルバイト、派遣社員などの場合には融資を組むことができません。
融資対象者は、サラリーマンや公務員などの安定した収入がある人に限定されてきます。
フリーランスや自営業の人はなかなか厳しいです。
勤続年数
勤続年数が3年以上あるかどうかも、判断基準となります。
3年以上の勤続年数があるかどうかは、収入が安定していることの証拠とされます。
返済実績
例えば、過去にローンの返済が滞っていたり、自己破産していた場合には、金融機関から融資を受けるのは困難です。
自分の返済実績が気になる方は、信用情報を照会するサービスがありますので、一度調べてみるといいでしょう。
借入残高
借入残高とは、住宅ローンや自動車ローンなどの借入金の残高のことをいいます。
当然、借入残高が多いと、融資を受けるのは厳しくなってきます。
不動産投資ローンを組む際には、不必要なローンは一括返済しておくようにしましょう。
物件の担保価値
購入予定の物件の担保価値も、審査をする上で重要な要素となります。
担保価値の判断は路線価と再建築価格によって算出されます。
物件の収益性
いざ融資を実行したら、実際に物件から十分な収益が上がるかどうかも重要なポイントです。
金融機関は、独自のシミュレーションで物件の収益性を判断します。
多くの金融機関で行われるのが、例えば金利を3%などの高金利に設定して収支が回るかどうかをチェックする方法です。
まとめ
今回はフルローンと融資全般について解説してきました。
フルローンは組めるものなら組みたいところですが、その分リスクが高くなりますので、総合的な観点から検討するといいでしょう。
不動産投資は一回の失敗が命取りとなりますので、慎重に行いましょう。