ストックオプション(新株予約権)とは?行使価格や株価への影響を投資家が解説
あなたは「ストックオプション(新株予約権)」をご存知でしょうか?
ストックオプションとは、株式を好きなタイミングで購入できる権利のことをいいます。
ストックオプションにはあらかじめ購入価格(行使価格)が決められていて、条件を満たせばいつでも権利を行使し、株を購入することができます。
ストックオプションは主に従業員や取締役に対して与えられ、社員のモチベーションアップのために使用されます。
ただ、ストックオプションは会社側と投資家側で利害が一致しないことが多くあり、揉める原因となります。
この記事ではストックオプションの基礎知識と利害関係を分かりやすく解説します。
- ストックオプションはあらかじめ決まった価格で株を購入できる権利
- 株価が上がるとストックオプションを行使した時の利益が大きくなるため、社員のモチベーションアップにつながる
- 従業員や取締役に対して付与される
(最終更新日:2022年3月14日)
ストックオプションとは?基本を理解しよう
まずはじめに、ストックオプションとは何か、ストックオプションの基本から解説していきます。
ストックオプションとは
ストックオプションとは、あらかじめ決められた価格でその会社の株式を購入できる権利です。
つまり、ストックオプションは新株の購入権利ということですね。
なお、新株予約権はあくまで株式を購入できる「権利」にすぎませんので、権利を行使しないこともできます。
ストックオプションは利益が出る時にだけ権利を行使することでができますので、確実に利益が上げられるのです。
また、インセンティブとして役員や従業員に新株予約権を提供する場合には、会社の株価が上がることで利益が大きくなるため、役員や従業員のモチベーションアップにつながります。
さらに、M&Aの場面ではストックオプションを活用して敵対的買収を防ぐこともできます。
- 利益が出る時にだけ権利を行使することでができるため、確実に利益が上げられる
- 社員のモチベーションアップにつながる
- ストックオプションを使って敵対的買収を防げる
参照: マネックス証券
社内向けと社外向けのストックオプションがある
ストックオプションには、役員・従業員向けに発行される社内向けのものと、社外の会社や個人向けに発行される社外向けの2種類に分けられます。
- 社外向け:役員/従業員向けに発行
- 社内向け:社外の会社や個人向けに発行
社内向けのストックオプション
社内向けのストックオプションは、社員のモチベーション向上のために発行され、株価が上昇すると新株予約権を行使した時の利益が大きくなるため、社員の士気が向上するメリットがあります。
社外向けのストックオプション
社外に向けてストックオプションが発行される時には、主に資金調達を目的としています。
ストックオプションを発行することで、市場から資金を集めるということですね。
社外向けにストックオプションが発行される時に注意しなければならないのが、資金繰りに行き詰まった企業が、現在の株価よりも安い株価で株を発行することを条件に資金調達しているケースです。
この場合、この会社のストックオプションを購入することはリスクが高く投資をあまりおすすめできません。
ストックオプションに投資する際には、慎重に内容を精査することが大切です。
ストックオプションの発行方法
ストックオプションを発行するためには、原則として株主総会での特別決議が必要です。
特別決議とは、株主総会の決議の中で最も重要な決議で、出席した株主の議決件数の3分の2以上の賛成があって可決されます。
賛成が3分の2に満たない時には否決となります。
ストックオプションの発行は株主の権利・利益に多大な影響を与えるため、特別決議を経てしか発行できないようになっています。
なお、新しく株式が発行されると一株あたりの価値が下がるため、既存の株主の賛成を得ることはなかなか難しく、ストックオプションの発行は否決されることが多い傾向にあります。
権利行使とは
ストックオプションの「権利行使」とは、新株予約権を使って、あらかじめ定められた期間内に定められた価格で新株を購入することをいいます。
上場企業の権利行使は、証券会社に依頼するだけで可能ですし、最近ではウェブサイトでも申し込み可能です。
権利行使を行うと、その日にその株式の株主となります。
行使期間と行使価格
ストックオプションには、あらかじめ行使期間が定められています。
行使期間とは、新株予約権が使える期間のことをいい、行使期間が満了するとストックオプションの効力が消滅します。
また、ストックオプションにはあらかじめ行使価格が決まっており、行使期間内であれば行使価格で株式を購入することができます。
行使価格は、ストックオプションが発行された時点での市場価格に合わせて設定されるのが基本です。
これは、新株予約権の目的が、将来株価が値上がりしても低価格で株式を購入できるようにするためです。
ストックオプションのメリット
ここからは、ストックオプションのメリットを投資家サイドと会社サイドに分けて解説します。
ストックオプションに対する理解を深めましょう!
- 投資家1:売却益が得られる
- 投資家2:損失のリスクが少ない
- 会社側1:資金調達ができる
- 会社側2:従業員のインセンティブになる
- 会社側3:買収の防衛策になる
【投資家1】売却益が得られる
新株予約権を使って安く株式を購入し、それを高値で売れば利益を得ることができます。
投資家としては、行使価格よりも株価が上がったタイミングで権利行使をすれば、確実に利益をあげられます。
【投資家2】損失のリスクが少ない
新株予約権は、投資家自身で権利行使のタイミングを決められます。
つまり、確実に利益をあげられるタイミングで権利行使ができますので、損失のリスクを抑えて投資ができます。
【会社1】資金調達の手段になる
新株予約権を発行すれば、会社側は借り入れをすることなく資金調達ができます。
また、新株予約権で資金調達すると、銀行借り入れや社債のように金利を支払う必要がないのも、大きなメリットです。
【会社2】従業員のインセンティブになる
新株予約権を従業員向けに提供すれば、従業員のモチベーションアップにつながります。
頑張って仕事をすれば業績が良くなり、株価が上がって従業員の財布が潤うことにつながります。
【会社3】買収の防衛策になる
上場企業が気をつけなければならないのが、敵対する企業からの買収です。
上場企業の株式は誰でも購入することができるため、仮に敵対企業が50%以上の株式を取得すると、その企業は買収されてしまいます。
買収を防ぐためには、その企業の株式を長く持ち続けてくれる安定株主を増やすことが大切です。
そういう意味で、新株予約権を発行することで、安定株主が増えるメリットがあります。
ストックオプションのデメリット
続けて、新株予約権のデメリットを解説します。
【投資家・会社】株式の希薄化が起きる
新株予約権のデメリットは、新株予約権が行使されると、株式が稀薄化することです。
株式の価値は、
純利益÷発行済み株式数
で計算されますが、発行済み株式数が増えると、1株あたりの価値が低下します。
基本的には株式の希薄化は売り材料となり、株価は下落します。
ストックオプションの無償割当・有利発行
ストックオプションは、「無償割当」「有利発行」「公正発行」などに分類することができます。
ここからは、それぞれの特徴を解説します。
無償割当
無償割当とは、相場よりも低い価格で株式を購入できる新株予約権を「無償」で割り当てることをいいます。
要するに、新株予約権を「タダ」で配るということです。
例えば、既存の株主に無償割当を行うと、現在の株価よりも低い株価で株式を購入できるようになるため、株主は利益を得ることができます。
それでは、なぜ新株予約権を無償で配るのでしょうか?
その理由は、無償で提供することで、既存株主の損失を最小限に抑えるためです。
無償割当は株主に配慮した増資の方法として近年注目されています。
通常増資をすると1株当たりの利益は減少し、株式の価値は下がってしまいます。新株予約権無償割当の場合も1株当たり利益の減少は避けられませんが、既存株主は新株予約権が付与されるので権利行使すれば出資持分の低下を防ぐことができ、権利行使を希望しない株主は市場で売却して売却代金を受け取ることによって増資による損失の一部を穴埋めすることが可能です。
参照:マネックス証券
公正発行
公正発行とは、ストックオプションを市場価格と比べて妥当な価格で発行することをいいます。
要するに、「新株予約権を有料で販売しますが、その価格は妥当な金額ですよ」ということですね。
有利発行
有利発行とは、特定の個人や法人に対して、新株予約権を市場価格よりも「著しく」低い価格で発行することをいいます。
公正発行との違いは、公正発行が妥当な価格であることに比べて、有利発行は著しく安い価格であることです。
新株予約権の買取請求とは?
ストックオプションは、一度発行されたらそれで終わりというわけではありません。
買取請求によって、企業にストックオプションを買い取ってもらうことも可能です。
ここからは、買取請求の仕組みと買取請求が行われるケースを解説します。
買取請求とは
買取請求とは、ストックオプションの発行企業があらかじめ定められた行為をした時に、新株予約権の買取を投資家が請求できることをいいます。
買取請求の目的は、ストックオプションの割当を受けた者を不利益から守ることです。
以下の4つのケースに該当すると、投資家にとって不利益となるため、買取請求ができるようになっています。
- 株式分割・交換・移転が行われた時
- 会社が合併する時
- 譲渡制限株式になった時
- 全部取得条項付種類株式とされた時
買取請求①株式分割・交換・移転が行われた時
株式分割とは、すでに発行されている株式を分割することをいいます。
株式分割が行われると、株価が下落します。
例えば、発行済み株式が2倍に増えると、株価は半分になります。
一方、株式交換とは、発行済み株式を別の企業の株式とまるまる交換することをいいます。
株式交換は、ある企業を完全子会社にする時に、子会社の株主の株式を親会社の株式と交換する場合などに行われます。
また、株式移転とは、発行済み株式を新しく設立した会社に取得させることをいいます。
よくあるのが、持ち株会社を設立する時です。
以上のケースでは、新株予約権の持ち主は企業へ新株予約権の買い取りを請求することができます。
買取請求②会社が合併する時
会社の合併方法には、吸収合併や2つの会社が消滅して新しい会社できる新設合併があります。
いずれのケースも、会社が消滅すると元々の株式の価値がなくなるため、買い取り請求が可能です。
買取請求③譲渡制限株式になった時
譲渡制限株式とは、取締役会や株主総会の許可がないと譲渡できない株式です。
譲渡制限株式になると、株式を売却することが難しくなるため、買取請求ができるようになります。
買取請求④全部取得条項付種類株式とされた時
全部取得条項付種類株式とは、株主総会の特別決議によって、発行済み株式の全てを企業がいつでも取得できる株式です。
投資家としては、企業の都合で株式を手放さなければならないため、買取請求が可能となります。
新株予約権のまとめ
新株予約権は、私たち投資家としては非常にありがたいものですが、株価が下落するということを考慮に入れると、なかなか使いどころが難しいです。
また、会社や投資家などの利害が必ずしも一致しないため、一筋縄ではいきません。
新株予約権にチャレンジするときには、慎重に行いましょう。